東恩納裕一「Large Interior」展 

 『Flowers』(トゥルーリング刊)は東恩納裕一さんの花をモティーフにした絵画・版画を編んだ1冊です。

作品はすべて、造花のシルエットをキャンヴァスに写し取る、ステンシル技法によって描かれています。つまり、花のシルエットは塗り残された部分ですから、花の影、あるいは花の幽霊を画面に定着させたものとも言えます。よそよそしい感じと奇妙な親密さが同居する、今見ても格好いい本です。

彼の個展「Large Interior」が2月27日(土)まで青山のギャラリーで開催されています。実は、1月で終了の予定だったのが会期延長となったので、見逃した方には朗報!

Yuichi Higashionna, Large Interior, 2021, installation view, VOID+

 会場は表参道のアートスペース、void+(ヴォイドプラス)、展示は4部屋に分散しています。建物のエントランスを入ってすぐ左にある小さな「ギャラリー」では、画像のミラーボールとストライプのインスタレーションが展示されています。

営業時間は、火~土曜日の12時~18時(日・月・祝日はお休み)です。

建物に入って通路を進み突き当たり左にあるアートセレクトショップ「void+stock」で蛍光灯+LEDの大型シャンデリアがディスプレイされているほか、常駐しているスタッフの方に声がけ(または事前に連絡)すると、残りの部屋を観ることができます。

void+:東京都港区南青山3-16-14 1F TEL: 03-5411-0080  Info@voidplus.jp

 

アートディレクター・映像ディレクターの南口雄一さん(https://yuichi-minamiguchi.com)による展示風景映像です。

 

声がけ(あるいは事前連絡)して観ることができるスペースで展示されているのは、ペインティング作品とオブジェによる新作インスタレーションです。

前者はカーテン、後者は照明器具を組み合わせたシャンデリアから着想を得ているのですが、それぞれモティーフであると同時にそれを逸脱して、カーテンのふりをして壁面に立っていたり、シャンデリアのふりをしながら床面に埋没しようとしているように見え、なんとも奇妙な、よそよそしい感じが印象に残ります。

その奇妙な感じを、東恩納さんは「不気味なもの」というジグムント・フロイトの論文を引きつつ、表現しつづけています。わたしたちが何気なく受け入れている日常生活や社会のシステムのヘンテコな部分を露わにしながら、おどろおどろしいというよりも、キッチュでユーモラスであり、そのバランスが格好いい仕事ぶりは健在です。